復元を重ねる間に上下と前後が"変わった"生物
澄江とバージェス頁岩で、ともに化石が発見されている動物の1つが、「ハルキゲニア(Hallucigenia)」である。全長2~3センチメートルほどの、全身が軟組織でできた動物だ。基本的な姿は、"肩当て"のないミクロディクティオンのようなもので、"肩当て"の代わりに背中に鋭いトゲが2列になって並んでいた。
もっとも、澄江とバージェス頁岩のハルキゲニアが完全に同一種というわけではない。澄江のハルキゲニアには「ハルキゲニア・フォルティス(Hallucigenia fortis)」と、より大型の「ハルキゲニア・ホンメイア(Hallucigenia hongmeia)」が報告されており、バージェス頁岩のハルキゲニアには「ハルキゲニア・スパルサ(Hallucigenia sparsa)」という種名があたえられている。
ハルキゲニア・フォルティス(左上)とハルキゲニア・スパルサ(右下)の復元画。ハルキゲニア・フォルティスの頭部は大きく、トゲは太くて短い。ハルキゲニア・スパルサの復元画。頭部は小さく、トゲは細長い illustrations by aiichi kato
フォルティスの背中のトゲは高さがなく、根元が太いことに対し、スパルサのトゲは高さがあり、全体的に細長い。また、フォルティスやホンメイアはチューブ状のからだの一端が膨らんでいて頭部になっていることに対し、スパルサにはその膨らみがない。