100年を経て正しい姿へ
1990年代になって、ハルキゲニア・フォルティスの研究が進むと、フォルティスには、2列のトゲと2列のあしがあることが明らかになった。そこで、ハルキゲニア・スパルサの標本も再び分析され、フォルティスと同じように2列のあしが確認された。つまり、「トゲのようなあし」はやはり「トゲ」で、「煙突のような構造」こそが「あし」だったことも確認された。
また、フォルティスとはちがって、スパルサの"頭部のようにみえた膨らみ"は、化石化の直前に「からだから滲み出た体液」ということも明らかにされた。口ではなく、肛門から出たものだった可能性があるのだ。その場合、前後が逆である。
その後、2015年になって、ケンブリッジ大学のマーティン・R・スミスと、トロント大学(カナダ)のジーン・バーナード・カロンによって、ハルキゲニア・スパルサの標本が再び分析され、チューブ状のからだの一端に、2つの眼と1つの口、口の中に多数の歯があることが確認された。
ハルキゲニア・スパルサの復元史。1977年に発表されたとき(上)は、上下と前後が逆だった。その後、1990年代に上下が確定し(中)、2015年に前後もわかった(下) illustrations by satoshi kawasaki
ウォルコットの発見から100年以上の歳月が経過して、ようやくこの動物の前後が確定するに至った。上下が逆転し、前後も修正されて、正しい姿となったのだ。
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